杉本真維子さんの詩について

前日に続けて3月28日にも来店した岡和田晃さんと「FUKUSHIMA、イバルナ」を中心に、杉本真維子さんの詩について議論しました。それを踏まえて書きます。

「イバルナ/イバルナ/FUKUSHIMA/イバルナ/わたくし」で終わる詩が誰に威張るなと言っているのか、私はその詩を何度読んでも分かりません。

FUKUSHIMAに言っているのか、わたくしに言っているのか、両方なのか、わたくしはFUKUSHIMAなのか、FUKUSHIMAはわたくしなのか全く分かりません。自身の解説文を読むと、わたくしを含む生者に言っているらしい。FUKUSHIMAをめぐる偽善的な詩が溢れていることに違和感をおぼえて誤解を恐れずに発表した詩のようです。

しかし彼女が違和感をおぼえた偽善的な詩はどのようなものか私には全く分かりません。「(福島産を)食べて応援」でもなさそうです。詩の中に「そんな死者のあなたがどうして/弱い者の/はずがあろうか」とあります。解説文を読んでも、生者が死者を下にみることを問題にしたいようなのです。

生者が死者を下に見る偽善的な詩に違和感をおぼえたのだとしても、そのような詩が何なのか私には全く分かりません。まさか、酷寒のなか津波にさらわれた被害者が最期に苦しい思いをしただろうことを可哀想と思う生者の悼みに水を差したいだけなのでしょうか。

ところで、FUKUSHIMAは何を意味しているのでしょう。なぜ福島ではなくFUKUSHIMAなのか、という問題以前に、なぜ東北でも宮城でも岩手でもなくそこなのか。地震と津波の死者数だけなら福島県は三番目です。しかし福島だろうがFUKUSHIMAだろうがそこは東京電力福島第一原子力発電所の過酷事故の一番の被災地です。

FUKUSHIMA/福島についての詩なのならば、原発事故の被害が作者に意識されていなければいけませんが、私にはその意識が全く読み取れませんでした。

作者は、FUKUSHIMAにイバルナと言っているわけではないらしい。仮にFUKUSHIMAに言ってるとしても、そのFUKUSHIMAって誰なのか全く不明ですが。

イバルナと、自分を含む生者に言うことにはどんな意味があるのでしょう。死者は弱くないということにどんな意味があるのでしょう。よく分かりませんが、原発震災の一番の被災地である福島における死者についてそう言う詩を詠むのであれば、原発事故関連死のむごさを相対化する意味はあるでしょう。

あるいは、原発事故関連の死者は原発推進という国策のために犠牲(本来の意味で!)になったので英霊となって報われている、というトンデモ思想にも飛躍しかねないでしょう。

考えすぎと笑うでしょうか。しかしそういう可能性を排除できないほどユルユルの詩だと思います。

福島についての偽善的ではない詩を書きたければ、福島の現実を知り、どんな偽善や欺瞞があふれているかをよく知る必要があるでしょう。作者にそのようなことへの関心があるとは私には思えません。

ぎょっとさせるタイトルで目をひきたいだけで、偽善や欺瞞を批判するものには全くなっていないと思います。

4月の営業日時

明日から始まる4月の営業日時のお知らせが遅れておりすみません。 とりあえず、明日4月1日(火)は16時から22時に営業の予定です。よろしくお願いします。

今日のお客様

岡和田晃さんがアトリエサードの岩田恵さんと一緒に来てくれました。ありがとうございます。このたび当店も岡和田さんが編集長を務めるアトリエサード発行の『ナイトランド・クォータリー』を置くことになりました。

3月25日の営業

お知らせが遅くなってすみません。本日3月25日火曜日、以下の時間に営業します。 14時~16時 17時~22時 16時から17時の1時間はお休み時間となります。ご了解ください。 写真は自宅のハクモクレンです。

無題

開店前に最終日の杉本真維子巡回展@つくば

@Cafe62149890

を見てきました。先日読みきれなくて二回目ですが、展示が変わってました。。 「FUKUSHIMA、イバルナ」が印象的でした。どゆこと!?と思って詩と解説文を何度も読みました。現代詩文庫の『杉本真維子 詩集』(思潮社、2024年)を購入しました。

そのあと数百メートル歩いて千年一日珈琲焙煎所 http://1001coffee.net/ の焙煎所に行くと、旧筑波山郵便局春の公開日に向けて展示準備中でした。毎回行きそびれているので今度こそ行きたい!

ややこしいですが、この展示準備中の展示とは、旧筑波山郵便局でのではなくてそこを紹介するための、千年一日珈琲焙煎所での展示の話です。

最近の新本入荷から

中村一成『今日に抗う 過ぎ去らぬ人々』(三一書房、2024年9月)

除本理史・河北新報社編『福島「オルタナ伝承館」ガイド』(東信堂、2024年9月)

月刊『地平』2025年4月号

『地平』はいつも発注のタイミングが遅れてしまうのが悩みですが、買い忘れていたバックナンバーを当店で見つけて購入されるお客さんもいるので、遅れても毎号入れるつもりです。

『火を焚くZINEvol.1』第二刷

しばらく版元品切で当店の在庫も切れていた『火を焚くZINE vol.1 つくば・牛久編』の第二刷が届きました。帯が途中で水色から白色に変わったようです。好きな方を選べるうちにお求めください。

追加情報です。帯の色は増刷にあたって水色から白色に変えたのではなく、二色とも作ったそうです。私の持ってる右側の第1刷とくらべると他にも気づく点がありますね。 なお、表紙の茶色いところは私がこぼした珈琲の染みです。。

自由と抵抗の雑誌『黒煙』

一部で話題の自由と抵抗の雑誌『黒煙』を扱うことになりました。当店にしては仕入れすぎたので一人一冊買ってください。

自由と抵抗の雑誌『黒煙』Vol.1 (東シベリア集団、2025年1月19日)

やたら黒光りしています。

織田忍『山谷をめぐる旅』

先日のだめ連イベントに参加してくれた織田忍さんのご著書が入荷しました。

織田忍『山谷をめぐる旅』(新評論、2024年)

織田さんは現在、訪問看護師として山谷エリアを中心に地域医療に従事されているとのことです。

Radioactivity

今日の午後はNHKラジオの特番を聴いてしんみりしたあと、このCDをかけました。 The Best of Radioactivity, Japan Tour 2017 Edition. クラフトワークじゃなくて、テキサスパンクのバンドですね。水戸record KNOX店主に教えてもらいました。1枚余分に入手したので定価でお譲りできます。特典缶バッジ付きです。KNOXの在庫に余裕があるようです。ぜひ一家に一枚備えてください。